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*** かたり亭 ***

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ダウン症ってなあに?



以前、お手伝いをしていた宮崎の「ひよこの会」の15周年記念誌「ほっぺにチュッチュ!」で、
タイトルのような文章を載せていただいたのですが、
今回20周年記念誌が出ることになり、また、依頼を受けてしまいました。
このごろ、ダウン症児ちゃんには接する機会がなく、冷や汗ものです。
でも、覚えていただいて、なつかしくうれしいです。
草稿をアップします。
かわいいですよ、ダウンちゃん。
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ダウン症ってなあに?
                    
生まれてきた赤ちゃん。しあわせを望まれておりてきた小さな命。新しくお父さんお母さんになった方々が、病院などで、「この子はダウン症です。」と告げられる。そのひとことの重さは、いかばかりかと思いめぐらしてみます。
ダウン症っていったいなんだろう・・・?からだのどこかが、ノックダウンしてしまうのだろうか?いいえ、違います。それでは・・・?ここでは、いろいろな本などを参考として、ダウン症についての知識を少しだけおさらいしてみることにしましょう。
 ダウン症とは、染色体の本数が他の人と違っていることに起因する素質で、正式にはダウン症候群と言われます。イギリスのラングドン・ダウンという医師が詳しく発表したのが世界で最初だったので、ダウン症と名づけられました。
 人の子が人として生まれ、猫の子が猫になるという生物の種類の決定はどのようになされるのでしょう。親ゆずりの体質が、髪の毛や瞳の色や体型、性格の一部まで似通っていることは、考えてみれば不思議なことです。そして、そのふしぎが何によってなされるかが、今日の科学によってわかってきています。個々の遺伝を決定するのは、情報を親から子へと伝える数億個もの遺伝子を乗せた染色体によるのです。
 染色体は、ひとつひとつの細胞の中にあり、人間では一般に四十六本あります。そのうち、四十四本は常染色体と呼ばれ、二本ずつ長さの同じものがあります。そして、残りの二本は、性別を決定するX,Yの性染色体です。XXの二本を持つ人は女性に、XYの二本を持つ人は男性となります。常染色体はだいたい長さの大きいものから順に二十二番目まで一対ずつ番号が振られています。ダウン症の場合、二十二番目の小さい染色体が三本あるため、四十六本あるはずの染色体が全部で四十七本になるのです。
 それではなぜ、ダウン症の子どもたちだけ、二十一番目の染色体が三本になってしまうのでしょうか。精子や卵子ができるときに、二十三組四十六本の染色体が半分ずつに分かれて減数分裂します。父親から精子を通して二十三本、母親から卵子を通して二十三本受け継ぐので全体として四十六本になるのです。ところが、精子か卵子のどちらかで、二十一本目の染色体だけが一つずつ分かれず、二本残ってしまうことがあり、それがダウン症の原因となります。染色体のそのものが悪いのではなく、まったく偶然の事故であり、自然のいたずらとしか言いようがありません。
 こうした染色体の異常は、それほど珍しいことではなく、少なくとも五パーセントくらい、つまり二十回の妊娠に一回は起こっていると言う統計があります。しかし、そのうちの九十パーセントは負担に耐えることが出来ず、自然流産してしまいます。ダウン症の場合、二十一番目の小さな染色体であるので、体も比較的じょうぶで、辛抱強い頑張り屋さんなので、うまく出生することができたのです。

※ 二十一番目の染色体が三つあるものを、二十一トリソミーと呼び、ダウン症の大多数はこの形です。他に、トリソミーのうちの一つが他の染色体にくっついているために、全体の数は健常者と同じ四十六本の転座型の人、ひとりの人の中に染色体四十六本の正常な細胞と二十一トリソミーや転座型の細胞が混ざっているモザイク型の人も数パーセントずつおられます。モザイク型は受精後の細胞分裂で起きる異常で、比較的軽度の障害になるそうです。

◎ ゆっくり育つダウンの子ども
ダウン症の子どもたちの多くは、筋肉の緊張度が低く、バレリーナのように柔らかい関節を持っています。そのため、首すわりや歩き始めが、他の子どもたちよりゆっくりになる傾向があります。特に、心臓に先天性の障害があった赤ちゃんなどでは、お乳の吸い方が弱く、体重増加が少なく、心配されることもあるでしょう。それでも、ある時期が過ぎると、おどろくほど健康になり、いつのまにか医者から遠ざかっていましたというおかあさんたちのうれしい声が聞かれます。
筋肉は使うほどついてくるものです。なでたりさすったり、お外の空気に触れたりすることも、小さな赤ちゃんではひとつひとつが運動なのです。かかりつけのお医者さんとも相談しながら、筋力や体力の発達に合わせた赤ちゃん体操をマッサージから始めたり、だっこでのお外の散歩など、気候に合わせて少しずつ始められると良いでしょう。(赤ちゃん体操の資料は、ひよこの会におたずねください。)
知能の発達もゆっくりで、精神発達遅滞の方の福祉の基本である療育手帳を取得される方がほとんどです。それでも、最近では鹿児島女子大学(現在の志学館大学)英文科を卒業されて図書館司書の資格を取られた岩元綾さんのような方もおられ、かなり個人差はあるようです。小さい頃から「この子は頭が悪い」と言われたり扱われたりしていると、そのような周囲の「期待」に応えて反応し、頭が悪い子のように行動する傾向があると言われています。あきらめずに声かけをして、大切に育ててあげると共に、ストレスに弱い性格面の特徴もありますので、本人のレベルに合わせてのんびりやらせてあげることも大切だと思います。
世の中には、知能テストの数値に出ない大切な能力もあります。ひとつには、ダウン症のお子さんは、一般的に、言葉に出して表現する能力よりも、人の気持ちを読みとる能力に長けていると言われています。成長してからは、ほろっと来るようなやさしい言葉を掛けてくれる大切な家族の一員なんですよ、と言われる親御さんもおられます。
性質としては、おおむね温厚でのんびりした子が多いようです。短所としては、さきほど述べたストレスに対する弱さや、一つの気持ちに囚われると気持ちの転換がうまくできず、じたんだを踏むような頑固さがあるようです。そういった性質については、無理に変えようとせずに、やさしい良い性質に目を向け、その子なりにできることを大切に育ててあげるといいなあと思います。何よりも家族のあたたかい言葉掛けや笑顔を交わし合うことが、子どもの心を育てるごちそうです。
◎ 気持ちをつなぎあって育てる
しかしながら、親と言えどもひとりの弱い人間。自分の子どもであっても、一時的に愛情を持てなくなったり、愛すればこそつらい現実に直面することもあるでしょう。特に、我が子がダウン症に生まれたという事実を受け入れるに当たっては、つらさや哀しみに加え、憎しみや怒りなど、さまざまな感情の波におそわれることもあることでしょう。それは、あたりまえのことです。どんなにステキなひよこの会のママでも、みんな何かしらそういった葛藤を経て、今のやさしさや笑顔を勝ち取ってきているのだと思います。ですから、自分をあまり追いつめず、時に本音を出して話ができる友人など、まわりの人たちの助けを借りて、つらい時期を乗り切っていけたらと思います。ひよこの会は、日常の細かな情報交換の他に、子どもの成長の喜び、悲しみを共有し、思いをつなぎあう場所として、続いて欲しいなあと遠くから願っています。

◎参考文献
ダウン症は病気じゃない 正しい理解と保育・療育のために 飯沼和三 大月書店
障害乳児のための染色体異常ガイドブック 障害乳児研究会編 代表 藤田弘子
子どものためのバリアフリーブック 障害を知る本② ダウン症の子どもたち
 茂木俊彦監修 池田由紀江編 稲沢潤子文 大月書店

追記:宮崎を離れ、東京に住むようになり、4年目となりました。ひよこの会のたくさんのステキなおかあさん達に会えて良かったと思います。当時、ご縁があり、「となりのしげちゃん」という絵本の中の小さい一言を考えさせていただきました。「体の地図のおまけ」という部分です。兄弟の子どもなどに、話すときの参考にしていただければ、幸いです。
(以下、版権の相談中なので略)




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